バンドの印税は解散後10年で貰えなくなるという話

バンドが解散してまた復活するのは、バンド解散後10年で印税が貰えなくなるから。 だからそれまでに一回復活して印税貰える期間をまた10年延長する 。 #知らなかった方が幸せだった雑学
https://twitter.com/omoshiroihanasi/status/263555374366474240

というツイートを見かけた(記事を書く間に、いつの間にか消されてた)。

そもそも印税とはなんだろう。手元の辞書を見ると、著作権の使用料、とある。著作権料と考えていいのだろう。ロックバンドなんかだと、なんとなくメンバー自ら作詞作曲して、自ら演奏・歌唱していることが多いような気がする。とすると、ここでいう、バンドの人たちがもらえる「印税」は、

  • 作曲の著作権
  • 作詞の著作権

のそれぞれにかかる使用料、ということになる(演奏・歌唱による権利はそれで著作物(=楽曲)そのものを生み出すわけではないので、著作権とは区別され、著作隣接権と呼ばれることがある)。ここで演奏・歌唱の著作隣接権の使用料というのは、とくに、「アーティスト印税」とか「歌唱印税」(演奏の場合は…?)とかいうらしい。作曲、作詞の印税は、「著作権印税」「作詞作曲印税」と呼ぶようだ(Wikipedia「印税」)。

著作権法によれば、著作権や著作隣接権の保護・存続期間は、著作権ではその著作者が亡くなった日の翌年から50年、著作隣接権ではその行為を行った日の翌年から50年となっている。著作隣接権の方が普通は早くにその日が来るけれど、少なくとも10年という短い期間になっているわけではない。

じゃあ、だから冒頭のツイートは誤りか、ということになりそうだけど、少なくとも上の規定を辿るだけでは、誤りとは言い切れない。ような気がする。

そういう契約がないとは言いきれない

楽曲そのものは、作詞・作曲家と契約を結んだ「音楽出版社」が彼らから「譲渡」を受ける(譲渡しても、一定の期間が経過すると著作者に返還されることもあるようで、一般的な意味の「譲渡」とは違うらしい)。音楽出版社はそれら楽曲を管理する。たとえばCDを製造販売したレコード会社は、JASRACに著作権料(CD定価の6%)を支払う。JASRACは手数料を差し引いて、これを音楽出版社に支払う。音楽出版社は、手数料を差し引いて、作詞・作曲家に支払うことになる。

演奏・歌唱に支払われるアーティスト印税は、レコード会社から支払いを受けたプロダクションが(?)契約にもとづいてアーティストに支払うことになる。

ところが、作詞作曲印税、アーティスト印税ともに、アーティストが実際のところどの程度の支払いを受けるかは、アーティストとその他関係者(音楽出版社、プロダクション、レコード会社等)との間の契約によることになる。もしもアーティストが条件を受けさえすれば、原則的にはどんな内容での契約もできる。
1975年に発売され、未だにシングル盤としての売上枚数記録1位を保持している「およげ!たいやきくん」の歌手は、枚数にかかわらず一定額の支払いを受けるという契約だったがために、 吹込み料として5万円をもらったのみだった、というエピソードがある。
ひょっとしたら、もしバンドを解散したら、10年間は印税(作詞作曲印税?アーティスト印税?)を支払うが、その後は再結成しない限り支払わない、という契約があるバンドもあるのかもしれない。

と、いろいろ書いてきたけれど、ほんとにそんな契約ありうるのかなあ…とどうもすっきりしない。
上のツイートのとおり、音楽を職業とされている方が「知らない」と言っている。

話の出所

で、この話は一体どこから出てきた話なんだろう。

検索してみると、2chにこんなものが見つかった。

知らないほうが幸せだった雑学 20
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/kankon/1348292557/

377 :おさかなくわえた名無しさん:2012/10/30(火) 19:13:10.49 id:uALvIEOP
バンドが解散してまた復活するのは、バンド解散後10年で印税が貰えなくなるから。
だからそれまでに一回復活して印税貰える期間をまた10年延長する

http://cherio199.blog120.fc2.com/blog-entry-7630.html

これだ。多分、最初のツイートの元ネタはこれなんだろうと思う。10月30日に書き込まれて、ツイッターに乗って僕の目に触れたのが11月1日。けれど、2chに書き込まれる前に、さらに元ネタがあったはずだ。テレビで誰かが言ってたとか、本に書いてあったとか、2chは2chでも、別の板なんかでずっと以前から囁かれていたとか。さらに探してみた。そしたらあった。

ロックバンドって解散してもだいたい復活するよね
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1350991458/

285:風吹けば名無し:2012/10/23(火) 21:24:32.82 ID:4Q5RS/Cp
バンドが解散してまた復活するのは、バンド解散後10年で印税が貰えなくなるから。
だからそれまでに一回復活して印税貰える期間をまた10年延長するんや。
ソースはやしきたかじん

307:風吹けば名無し:2012/10/23(火) 21:28:58.68 id:pVj6oh7f
>>285
たかじんはあんまりあてにならんで

http://3keta.net/blog-entry-2693.html

読む限り、ソースが一応書かれているから、多分、この285さんがネット上の本当の元ネタなのではないかと思う。

で、どうもテレビか何かで言っていたことの伝聞らしい。もしそうだとすると、元々の発言者の意図通りのことが書かれていない可能性がある。
バンドが解散して10年も経てば、いかに一世を風靡したバンドであっても、徐々に世の中から忘れ去られ、放送でも曲が掛けられなくなり、カラオケでもあまり歌われなくなる。復活することで再び過去の楽曲含めて印税が入るようになる…もしかすると、それが元の「やしきたかじん」(本当にやしきたかじんが発言したのか定かでないので、括弧をつける)の発言の趣旨だったのじゃなかろうか。