広島コミコミスタジオの履歴と閉店
2019年9月16日、広島にあった「コミコミスタジオ」というコミック専門書店が閉店した。
今後は東京・町田での店舗販売と通信販売を続けるのみになり、広島での店舗販売は終了となる。
この「コミコミスタジオ」は、広島の地元書店「中央書店」の手掛けるお店だ。
10年以上前、初めて広島に来た時、ユニクロの入ったビルの上階にこのお店を見つけて以来、なんとなく愛着を感じて、事あるごとに足を向けていた。
当時からBL・やおいに強い印象だったものの、近年はより一層BLに力を入れていたらしい。
* * *
広島から店舗がなくなってしまう「コミコミスタジオ」をネットで検索してみる。
ずっと「中央書店」が運営してきているのだけど、名前が変わったり、場所が変わったり、複数店舗があったりしたことがわかる。
いずれにしても、広島のアニメファンにとって書かせないお店だったようだ。思い入れのある人も多そうだった。
- 作者: 胡正則,長岡義幸
- 出版社/メーカー: アルメディア
- 発売日: 1994/11
- メディア: 単行本
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東映がやっていたアニメグッズ販売店を、中央書店が買い取った1979年から始まる。…ちょうど今年で40周年だったのか!
時期 | できごと | 記事 | 出典 |
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それ以前 | (「アニメカプセルペロ」開店)? | (書籍にこの記述はない。右記「まちBBS」の書き込みによれば、広島東映パラス(現東急ハンズ広島店)前。) | *1 |
1978年 | 「アニメカプセルペロ」開店(移転?) | 的場東映4階。東映によるグッズ中心の店舗。宇宙戦艦ヤマトをイメージした内装だった。 | *2 |
1979年 | 1月、「アニメカプセルペロ」閉店 | *3 | |
1979年 | 3月、「アニメカプセルペロ」再開店 | 権利を中央書店が譲受。中央書店によるアニメショップの始まり。 | *4 |
1979年 | 再開店半年後「アニメカプセルペロ」は「アニメック広島」と店名変更 | *5 | |
1983頃 | 「アニメイト広島」開店 | 胡町・三越裏「中央書店ニュー胡町店」の2・3階部分。中央書店の2店舗目アニメショップ。 | *6 |
1984? | 「アニメージュスタジオ」開店(「アニメック広島」閉店)。 | 袋町ダイエー(現ユアーズLIVI広島本通店)近く。先の店長が、徳間書店に対して風の谷のナウシカとの併映に同じ宮崎駿監督作品である名探偵ホームズを推し、それが成功したことから、徳間書店からの申し出により店名が付いた。 | *7*8 |
1985? | 「コミコミスタジオ」開店 | サンモール広島4階。サンモール広島からのオファーによる | *9 |
1985? | 「アニメイト広島」閉店 | 「コミコミスタジオ」に注力のため | *10 |
1993年 | 「アニメージュスタジオ」移転 | サンモール広島の隣のビルへ | *11 |
1998年 | 中央書店による「アニメカプセルペロ」時代からの店長が退社 | *12 | |
1990年代末 | 「アニメージュスタジオ」閉店(し、サンモール広島4階の「コミコミスタジオ」が「アニメージュスタジオ」に店名変更する)? | (右記の「まちBBS」の書き込み以外に情報を見つけられず) | *13 |
? | (サンモール広島4階の店舗名が「コミコミスタジオ」に戻る)? | 不明 | |
2016年 | 「コミコミスタジオ町田」開店 | 東京都町田市への進出 | *14 |
2018年 | 「コミコミスタジオ」移転 | 大手町筋沿いアニメイトビル*15へ | *16 |
2019年 | 「コミコミスタジオ広島」閉店 | 中央書店による広島におけるアニメショップが終わる。(東京都町田の店舗は継続) | *17 |
※「アニメージュスタジオ」の開店は1年遅いかもしれない。1994年出版の「物語のある本屋」は「今年七月、アニメージュスタジオは開店十周年を迎えた」と書く一方、1985年初出の「新文化」(「システムと儀式」収録)の記事は「この夏オープンした中央書店アニメージュスタジオは…」と書く。物語のある本屋に従えば、アニメージュスタジオの開店は1984年となり、新文化に従えば1985年となる。「コミコミスタジオ」は、「アニメージュスタジオのオープンから半年も経過しないうちに、またもや出店が決定した」(「物語のある本屋」)とのことなので、開店はアニメージュスタジオの翌年と思われる(なお新文化にコミコミスタジオの記載はない)。「アニメイト広島」の閉店は、「物語のある本屋」に「9年前にアニメショップは諦め」とあるので1985年と思われるが、アニメージュスタジオ開店の年がはっきりしないだけに…。この年表では、主に参考にした「物語のある本屋」に拠った。
* * *
書籍は1994年の出版なので、その後のことははっきりとわからない。ネット掲示板の書き込みを信じれば、一時期「コミコミスタジオ」の店名はなくなったことになるけれど…
それにしても、アニメック広島、アニメージュスタジオは特筆しなければならない。カラオケ大会に原画展、イラスト大会のほか、「カリオストロの城」の絵コンテ商品化を東京ムービー新社に頼み込み、自店舗限定商品として売り出したという。店長は個人的に同人誌即売会を開いたり、ミニコミまんが誌を作ったりするようなすごい人で、徳間書店への定期レポートも行っていたし、名探偵ホームズの発掘にも貢献した。さらに「新文化」の記事によれば、「アニメージュスタジオ」では、アニメファンのためにAV機器まで多く扱っていたようだ。そもそも「アニメージュ」という名前を直接徳間書店から受領したという経緯がすごすぎる。
また、アニメージュスタジオの常連から少年チャンピオンで連載を持つ漫画家も生まれたそうだ(細馬信一など。落書きノートにセンスのあるイラストを描いたお客に声をかけていったそうだ)。
その知識と行動力、広島だけでなく、全国的にも、かなり異彩を放った書店だったのだろうと思う。
そりゃ、広島のアニメファンの記憶に残っていない、わけがない…。
* * *
私が初めて広島のそのお店に行ったとき、漫画・アニメDVD・声優CDを扱う書店、、、というよりは女性向け漫画、それも特に耽美・やおい・BLを意識した感じの品ぞろえのお店だったような気がする。
その割には、お店には等身大鉄腕アトムのディスプレイが掲げられていて、昔はそれほど女性寄りではなかったのかなと思わせた。
鉄腕アトムのディスプレイは、どういうわけか右足首が欠けていて、ネジがむき出しになっていた。今に至るまでになんとなく歴史がありそうなお店だなと感じていた。
その不思議な感じが好きだった。
いま私からは、広島のお店よりも町田のほうがよほど近い。
町田に行ってみると、かつて広島で見た時よりずっとずっと女性向けの店舗で、あのとき感じた不思議な感じは感じられない。しかし「COMICOMI STUDIO」は、町田に続いている。
*2:物語のある本屋P156
*3:物語のある本屋P156
*4:物語のある本屋P156
*5:物語のある本屋P158
*6:物語のある本屋P160
*7:物語のある本屋P161
*8:本の雑誌社「システムと儀式」大塚英志、1988(初出「新文化」1985年12月12日号)、P143によれば、店長は徳間書店コミュニケーションズに定期的に商品開発に関するレポートを提出しており、実際に商品化されたものも多かったという。
*9:物語のある本屋P163
*10:物語のある本屋P164
*11:物語のある本屋P164
*12:http://www.asahi-net.or.jp/~pc5m-ab/purofil.html
*13:広島の中心地にヲタの聖地を〜6話「ヲタとカープの事情」〜
*14:professional 〔プロフェッショナル〕 書店を極めた者たち。【第32回】中央書店 代表取締役社長 内藤剛さん│店舗支援ソリューションサイト「ショッピィ」
*15:前述のアニメイト広島とは異なる、株式会社アニメイト直営のアニメイト広島店が入居するビル
*16:https://chuoshoten.co.jp/wp-content/uploads/2018/03/pressrelease20180320.pdf